理事長 メッセージ

2024年度スローガン 飛躍 想いを紡ぎ、新たな道を創造する

公益社団法人立川青年会議所2024年度 理事長所信

はじめに

片桐 庸行
第60代 理事長 片桐庸行

 人が大きく「飛躍」するためには、十全な準備を行うことで土台を固め、最新の知識や技術を用いることが必要であると考えます。準備が整わない行動は初動が遅れるだけではなく、方向性も曖昧なまま物事に取り組むため、かけなくてもいい時間と労力が費やされます。同時に、考えや想いを顧みることもできず自分本位な行動になり、本来やらなければいけない行動ができず、些細なほころびの修正に時間を取られることになります。そして、最新の知識や技術を活用できなければ、時代を捉えた行動にはならず、仲間の共感を得ることができない可能性があります。その結果、徐々に孤立し、自らの想いや情熱もなくなっていき中途半端な行動をとることになり、十分な成果や喜びには繋がりません。

 これは、すべての事柄において共通することであり、私の社業においても「段取り八分、仕事二分」という言葉があるくらいに、事前の準備が必要であることを日々実感しています。また、最新の道具や手法を取り入れることができるかどうかは、仕事の出来栄えやスピードを左右するほど重要なことです。そして、私たち青年会議所メンバーが個人や集団の意識や行動を変え、地域をより良くしていこうと行っているJC運動においても、何かを成し遂げるためにはしっかりとした準備が必要であり、時代に適した方法を用いることが重要です。

 先人たちは、誰もが笑顔で住み暮らし続けられるまちづくりを目指し、地域のために運動してきました。長年にわたり積み上げてきた想いに立ち返り、今、本当に課題を解決したいと願っている人々の声を聞くことで準備を行い、組織を確立することで足元を固めて、新たな未来を創造するために一歩を踏み出す強い想いが私にはあります。自分たちの住み暮らすまちに想いを馳せ、人々が笑顔になる未来を想像し、次代に繋がる大きな一歩を踏み出していきます。

60年の先端に立つ

 先人たちが築き上げてきた運動は、本年度で60周年を迎えます。言葉にすればとても短く、比較をすれば驚くような年数ではないのかもしれません。

 「幾多の諸先輩によって築かれた、立派な郷土を引継ぎ、より住みよく、より発展させることは、我々青年に課せられた責務であります。」これは、60年前に書かれた立川青年会議所の設立趣意書の一文です。人の年齢に置き換えれば歴が還る年で、私の想いが60 年前の先輩たちから変わらずに受け継がれてきたことを改めて知り、さらにこの設立趣意書の重みを感じることができました。40歳で卒業を迎える立川青年会議所において、時々の青年が常に移り変わる時代の変化に翻弄され、より良い未来のために運動し続け、それを超えたところにある喜びや楽しさを、必死に伝え繋げてきた想いの詰まった歴史が密度と価値になり、60年の財産として受け継がれてきたのです。

 人から人へと伝えられた想いは原動力となり、やがて自らを変化させ、地域を巻き込んで成長してきました。その想いを紡ぎ、これからも地域に必要とされ、愛される立川青年会議所を未来へ繋げていく責任が私たちにはあります。なぜなら、それだけの価値があると信じているからです。多くの想いを紡いできた立川青年会議所だからこその価値を、この60周年でより飛躍させるために、私たちだからできる新たな価値を生み出し、次代のリーダーたちに繋いでいきます。

「ひとづくり」は仲間との出会い

 青年会議所のミッションには「青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供する」というものがあります。青年会議所は多種多様な職種や環境のメンバーで構成されています。様々な目的を持ったメンバーが所属する青年会議所において、地域への関わり方や目標とするリーダーシップ像も、それぞれメンバーごとに違ったものになるはずです。

 理想とする漫画の主人公のようなリーダーになることは、誰にでも出来ることではありません。違いがあって当たり前、メンバーそれぞれが個々の目的を持ち、それを尊重し合うことで、それぞれが理想とするリーダーになれる自己成長の場が青年会議所なのです。

 ただし、それぞれに違ったリーダー像も自己満足になっては意味がありません。なぜなら、自分の価値観だけでは社会は形成されていないからです。人は家族や会社の仲間、地域の方々と関わりながら生活をしています。この現状がある以上、自分の価値観だけで人と関わり、何かを成し遂げることはできません。何が正しいことかを自ら考え、動き、多くの仲間を巻き込み、その仲間とともに様々な目的を達成する機会を自らの成長へと変え、社会を変えていけるリーダーに成長していく。そして、さらに新たな仲間を得て、その輪を広げていく。これが、私が考える「ひとづくり」です。

 そして、立場が人を変えると言われているように、私は青年会議所に入会し、ステージを変えるごとに新たな課題解決にチャレンジしたことで成長を実感した一人です。多くの仲間と議論することで新たな価値観に触れ、心の成長はもちろんのこと、自身の社業や生活にも良い効果が出ています。私は立川青年会議所を、地域の「寺子屋」の役割を果たせる、仲間と出会う場、成長する場として必要とされる組織にしていきます。

地域の名を冠するという責任

 私たち青年会議所は、どの組織も国や地域の名前を冠しています。それは、その地域に責任を持って活動する決意を表しています。ただのエリア分けではなく、その地域に密着して活動することで、地域ごとに解決しなければいけない課題や、理想の未来を考え行動することができ、それを継続することができれば、地域の方からもより必要だと認められる存在になることができます。

 では、責任を持って活動するために行うべきことはなんでしょう。それは、地域の方のために地域の方と一緒に行う事業だと私は考えます。そして、それを行ううえで最も重要なことは、地域の歴史や文化に触れ、自ら体験し、青年らしく新たな試みを行い、より多くの地域の方と接していくことです。立川青年会議所は多くの地域事業に参画し、地域の方々と関わらせていただいております。先人たちが積み上げてきた活動のおかげで、地域の方からも知っていただける存在になってきているように感じます。私たちも、次代のリーダーが地域に受け入れてもらえる道を作っていく責任があります。

 同時に、より良い地域の創造に向けて必要なことは、地域のコミュニティや団体も横断的に協力し、団結したまちづくりを行うことだと考えます。専門的な知識や経験を縦割りの情報共有だけに留めるのではなく、垣根を越えて専門性を活かした協力体制を構築していくことも、私たちの責任として取り組んでいく必要があるのです。

 熱意と計画性を持った事業は、確実に新たな誰かとの新しい関係を構築することに繋がります。同時に、すでに繋がりを持っていただいている方にも新たな気づきをもたらし、より大きな巻き込み型の運動に発展する可能性も秘めています。地域に住み暮らす一員として、地域を想う気持ちが合わさり、多くの賛同を得ることで、地域に必要とされるハブ役になることが、私たちの責任であると自覚し行動していきます。

多様性とは「多くの個性」

 現在の日本社会において、訪日外国人によるインバウンド消費が新型コロナウイルス蔓延以前の基準に戻りつつあり、国の経済を支えています。同時に、日本に住み暮らし技術を学び、将来に活かしていこうと考える在日外国人の方も増加しています。他方でジェンダーマイノリティと呼ばれる、ある一定の考え方のもと少数派とされる方や障害を抱える方など「互いに異なる点がある多くの人や物」「多くの集団から見て違う考え方」を多様性と表現することがあるように感じます。

 しかし、それは特定の表現をするほど特別なことでしょうか。多様性とは「多くの個性」だと私は考えています。そして、個性とは特別なものではありません。一人ひとりが必ず持っている他者との違いです。その違いを理解し、相手の立場に立って考える心を持っていれば、できないことがあっても補い合っていけるのです。

 私たちは環境が変わるたびに多くの人と出会い、共に時間を過ごすことで互いを理解し、足りない部分を補い合って人生を歩んできています。共に支え合うことで誰もが住み暮らしやすい社会に変化していくことは、何も特別なことではないのです。法の整備や地域の開発を待つのではなく、相手への理解と思いやりの心で解消していける課題はまだまだ多くあるはずです。

 私たちにできることは限られているのかもしれません。しかし、一人ではできないことも地域や仲間がほんの少し心を寄せ、協力し合えば補うことができます。

 私が考える誰もが住みやすいまちづくりとは、個性を尊重し、互いを思いやる心で互いの足りない部分を補い合い、共に生活をしていく。そして、それが伝播することで、多くの方が寄り添い合うことができる地域の創造です。それが、大きな始まりの一歩になると考え、地域を巻き込んで理解し合える機会を創造していきます。

未来に無限の可能性を

 子供たちを取り巻く環境は、驚異的な変化を遂げており、成人年齢の引き下げや高等教育の無償化など、政府や各自治体も子供たちの未来に対する向き合い方が変わってきました。

 中でもデジタル社会の急激な発展に伴い、子供たちが情報を容易に手に入れることができるようになり、自らが経験しなくても知ることができるようになりました。それは多くのメリットを生みます。勉学においては、場所や時間に縛られることなく聞きたい話を聞くことができ、スポーツにおいては、学びたいスキルを動画配信で何度も繰り返し見ることができます。さらに、友人とのコミュニケーションもデジタルの中だけで完結することができます。

 経験する前に面白そうだな、大変そうだなと思うことはとても重要なことです。しかし、経験していないことを知っているということは、当然ですが本当の意味で経験したことにはなりません。経験する前に調べることで、体験したように感じ、自分の可能性を悟り、諦め、実体験する機会さえ遠ざけてしまうことは、私たちのような大人にも起こっていることでしょう。それが、未来に無限の可能性がある子供たちに起こってしまっている現状は、体験格差を生むきっかけになり、絶対にあってはいけないものです。

 私たちは、子供たちに機会を提供し続けています。これは、経験する前に諦める、やらないのではなく、自分の可能性を信じ、無限の選択肢があることを実体験してほしいからです。事前に情報を知っていることも、子供たちにとっては重要なことです。しかし、私は多くの実体験に触れてもらい、学んだことを大事にしてもらいたい。そして、多くの実体験から選択した世界で、周囲を巻き込んで変化を起こせるリーダーになってもらいたいと考えています。それを、私たちが先頭に立ち、地域を巻き込み運動することで実現できる社会にしていきます。

誰からも模範となる会務運営とは

 多くの組織が会議を円滑に進め、意義のあるものになることを理想としながら日々会務を運営しています。それは、それぞれの理念に基づいて組織を運営し、その目的も、対象も、メンバーも違うため、組織ごとに異なるものになると思います。

 では、私たちの理想の会務運営はどのようにするべきなのでしょうか。私は、組織のあり方を常に考え続け、実施と検証を繰り返し、理想を追い求め続ける会務運営こそが模範であるべきだと考えました。

 先人たちが練り上げた今日までのやり方を変えていくことは容易ではありません。それは、想いを巡らし、議論を重ねた結果の「今」だからです。地域の環境や技術の進化、メンバーの性質など私たちを取り巻く状況は目まぐるしく変化しています。私たちも、先人たちが練り上げた既存のルールを、その歴史に至るまで熟知したうえで、理想の会務運営を目指すことが必要なのです。

 そして、何よりも重要なことは、それが次代に残せるものかどうかです。時代を捉えたやり方を考え続けることは重要ですが、自分たちを中心に考えた自分本位なルールは、誰にも寄り添っていないものになり、寄り添っていないルールは時代の変化に対応できる強度を持ったものにならないのです。

 私たちは、次代に残すべき組織における会務運営を目指し、日々考え続け、実行していきます。なにより、この理想を目指し続けるためにはすべてのメンバーが協力し、利他の心を持って作り上げることが必要になります。関わるすべてのメンバーが、自分事として理想の会務運営を考え、実施し、検証することでしっかりとした土台を作ることができる組織を目指していきます。

「届ける」ことで最大の価値を

 私たちの活動だけに限らず、ほぼすべての事象が最大の価値を持つには、相手に「届ける」ことが必要です。公益法人である立川青年会議所にとっても、内外問わず賛同を得るためには最重要事項の一つであるといえます。

 立川青年会議所も常に新しい活動を発信し続けています。しかし、発信という一方通行の伝え方ではなく、そこには相手がいることを再認識し、慮り、「届ける」ことで、その事業の価値はより高く、より広く伝わるものであると私は考えます。そのためには、一つひとつの活動においてどのような届け方をすることが一番効果的か、より多くの方に届けるにはどうすればいいのかを考え、参加してもらう仲間や地域の方に感謝し、ワクワクする、また見たいと思ってもらえる広報を構築する必要があるのです。

 では、「届ける」ためには何が必要なのか。それは、徹底したリサーチとニーズの把握です。自分たちが届けたいものはどんな価値があるのか、どんな想いで事業構築をしているのか内部のリサーチを行い、それを伝えたい相手が何に興味を抱き、何を求めているのか、ニーズを捉えることで興味を持ってもらえる「届ける」広報になるのです。

 時代の変化に伴い多種多様な価値観を持った人々に「届ける」ことは簡単なことではありません。しかし、広報には無限の可能性があります。時代とニーズを捉えた人の心を動かす広報は、常に社会が追い続けている問題です。それを、私たちが実践し追及していくことは、それ自体が価値のある運動になります。地域にとって価値のある存在であり続けるためには、より多くの人の賛同を得る必要があります。私たちは、その心を動かす最初の一歩として全員が「届ける」広報を行うことを目指していきます。

結びに

 私たちは、誰もが笑顔で住み暮らし続けられるまちづくりを目指して、日々運動しています。地域や行政、そこに関わる諸団体の目的とは、住み暮らす人々が笑顔で何の心配もすることなく生活ができ、自ら望んで前向きに挑戦できる環境を作っていくことだと私は考えます。そして、私がそのために大切だと考えることは、想像力と創造力です。まちや自分がどのような成長をすれば誰もが住み暮らし続けられるものになるのかを、その結果の先にある地域の人々の笑顔まで想像し、自分の成長に繋がる新たな価値を生む事業を創造していくことで、自分もまちの未来も「飛躍」していくのだと考えます。

 それは一人では難しいのかもしれません。しかし、私たちには共に理想を語り合い、共に切磋琢磨できる仲間がいます。その仲間は同じ青年会議所のメンバーだけに限らず、私たちの運動を応援してくださる賛同者の方々も同様に仲間なのです。共に地域に想いを馳せ、より良い未来のために共に手を取り合い、共に歩んでいける存在になります。その想いは、また新たな誰かに伝わり大きな渦となって、新たな道に繋がっていくでしょう。

 誰もが笑顔で住み暮らし続けられるまちづくりを実現していくためには、その連鎖を生み出すことこそ必要であり、それが、私が想い描く「飛躍」なのです。

 大きく飛躍していくために、想いを紡ぎ、一緒に新たな道を創っていきましょう。

Top