公益社団法人立川青年会議所2025年度 理事長所信
はじめに
第61代 理事長 長井 俊
「青年時代の貴重な時間をどう生きるか、それをどう活かしていくか、そしてどんな人々と出会い自身を磨き上げるか」それが、すべての青年に求められるものであると私は考えます。
私は2015年に立川青年会議所に入会し、これまで多くの役職を経験させていただきました。青年会議所は単年度制のため、1年で組織が変わります。毎年役職も変わり、多くの経験や学びがある反面、時にはすべてが新しくなるが故に、戸惑い、足踏みをしてしまうこともあります。その中で役職を経験する度に、人を動かすことや地域に変化を起こしていく難しさを体感してきました。それでもこれまで私が活動を続けてこられたのは、その時々で支えてくれた地域の皆様や先輩諸兄姉、共に切磋琢磨してきた仲間がいたからです。その一瞬一瞬の貴重な出会いは、かけがえのない私の人生の財産となっています。社会を動かすことは、1人では困難です。私達は常に自身を磨き、そして周りと手を取り合いながら、より良い組織を作り上げ、我々の運動を市民に伝播することでより良い地域が創られていくのです。
立川青年会議所は、昨年で60周年の節目の年を迎えました。これまで多くの先輩諸兄姉が地域と向き合い、社会をより良くしようと運動を展開してきました。今までの歴史の中で、常に挑戦を繰り返しながら失敗や成功を重ね、年々成長してきたことで、今の立川青年会議所が地域に根差せているのだと思います。しかしながら、築き上げてきた歴史や信頼を活かすのか否かは、今の時代を生きる私たち次第であると考えます。勿論、時代の移り変わりの激しい現代だからこそ、今まで通りの運動を展開していては自身の成長や組織の発展はありません。これまでの歴史を重んじるだけではなく、これからの70周年、100周年に向け、新たなチャレンジを恐れずに大きな一歩を踏み出し、前向きなトライアル&エラーを繰り返していくことが必要不可欠です。
一人ひとりの挑戦が、組織の大きな挑戦に繋がり、その「共鳴」がより良い組織を作り出していくのです。
グローバルな地域を共に創り上げよう
日本で働く外国人労働者の人数は、2024年までに全国で200万人を超え、これまでで最も多くなっています。国を越えて人々がビジネスの機会を得る時代となり、多種多様な人々と関わり、様々な文化が絡み合うことでグローバル化は加速しています。また、ヒト・モノ・カネ、更に情報が国境を越えて動く中で、人々の付き合い方や考え方も多様化しています。つまり、経済的な観点だけでなく、様々な文化が混ざり合う文化的視点での、地域の多文化共生についても考えていく必要があります。
地域に置き換えてみても、至る所で外国の方々を見かけることがあり、立川市・国立市・武蔵村山市の3市においても外国人の人口は増加傾向にあります。今後も、外国人は更に増えていくことが予想され、多文化共生は市民一人ひとりの身近なものになっていきます。つまり、国籍に縛られることなく、地域に住み暮らす外国人に対しても思いやりを持てる、グローバル思考の市民を1人でも多く増やしていくことが重要です。
青年会議所は、国際的ネットワークがある組織だからこそ、グローバル化が進んでいるこの時代に我々が先頭に立っていかなければなりません。立川青年会議所では、現在韓国の温陽JCとモンゴル国のJCIキャピタルと姉妹締結しています。志を同じくする者たちが他国にも存在する我々は、この地域のグローバル化をリードしていかなければなりません。
今後は、日本の経済を支える重要な担い手として、更に外国人を受け入れる企業は増加していくことが予想されます。立川青年会議所は、今まで地域の企業・諸団体との連携を図り、議論を深めながら地域のグローバル化を進めてきました。本年度はそれらに加え、多くの地域企業を巻き込みながら、行政との連携を強化し、地域に住み暮らす外国人に対して思いやりを持てる市民を増やし、地域一体となった具体的な対策や施策を打ち出せるようにしてまいります。さらに、立川が多摩地域や東京のモデルとなるようなグローバルな地域の実現に向け運動を進めてまいります。
国籍を超え、様々な文化が混ざり合う地域で、お互いが共に尊重し合いながら共に生きていける地域を目指し、まずは自ら行動し地域の「共鳴」を生み出しましょう。
地域と共に、子供たちに成長の機会を
子供たちを取り巻く環境は、インターネットの普及、人口減少と高齢化、親世代の価値観の多様化、地域との交流の機会の減少など、急激に変化してきています。特に私達の暮らしを便利なものにしてくれているインターネットやSNSの普及は、場所や時間に関係無く様々な方々とのコミュニケーションを可能にしました。しかし一方で、核家族が増え、身近な大人は親だけで、近所付き合いは希薄になり、家の中で過ごす子供が増えているという現状もあります。このように本来、我々の生活を豊かにするはずであった媒体が、むしろ人間関係と社会を分断している側面もあると私は考えます。
私が子供の頃は、よく近所の方々と外で遊び、自治会などのイベントに参加し多くの人々と交流をしてきました。その中で自然と交わされるコミュニケーションを通じて、礼儀・礼節を大人たちから実体験を通して学んできた経験があります。そして、それらの関わりの中で地域の大人たちも、積極的に地域の子供たちに接してくれていたことを覚えています。
子供たちには無限の可能性があります。幼き頃の経験は、必ず大人になってからも活きてくるものです。そのためには、体験活動や多種多様な方々との交流、新しい知識を習得する活動の多様な学びや経験を通して、他者や地域を思いやれる豊かな心を身に付けることが重要です。また我々大人たちも、地域の子供たちに積極的に寄り添っていき、その学びの機会を届けていくことも重要であります。私達はこれまで、子供たちの自己肯定感の育成・生きる力を育む・体験格差を無くすなどの青少年育成事業を展開してきました。これらに加え本年度は、地域のお祭りや事業への参画を通じて、地域と子供たちの接点を強化し、実体験を通して学ぶ機会を提供していきます。
子供たちは地域の大きな財産です。次代の地域を担っていくのは、紛れもなく現在を生きる子供たちであります。だからこそ生まれ育ったまちを好きになり、地域への愛着を持ってもらうことが重要です。そのためにも、今の地域を支えている大人たちと共に手を取り合って、子供たちの未来を守っていく責任が私達にはあります。子供たちの明るい未来のため、地域の大人たちの先頭に立ち、世代を超えた「共鳴」を生み出しましょう。
青年という貴重な時間に多くの人と出会い、共に学ぼう
立川青年会議所の会員数は、卒業生や退会者の人数が入会者の人数を上回り、減少傾向にあります。単純に人口の減少や少子高齢化なども挙げられるかもしれませんが、SNSの普及により、直接会わなくても人と人とが繋がれる社会になり、組織に所属しなくても多くの出会いがあることも要因の一つと私は考えます。しかし、青年会議所には確固たる魅力があります。
青年会議所は「学び舎」と言われています。それは、青年会議所の大事な要素の一つに、地域のリーダーを作りあげるために「青年に発展と成長の機会を提供する」ことがあるからです。具体的には、青年会議所のメンバーは職業や役職、環境が違う人達が集まり、仕事とは違うフィールドで本気で意見を交わすことで他者から学び、成長しています。その学びは、紛れもなく人と人との交流によって生まれるものであり、多くのメンバーと触れ合うことで、多様な価値観を融合させ成長していくのです。
私も、多くのメンバーや地域の方々との出会いを通して、考えが変わり、そして行動が変わった1人です。入会当初は、少しでも友人ができれば良いという考えで活動し、積極的に活動ができていませんでした。しかし、立川青年会議所の活動の中で、本気で地域や青年会議所と向き合い、今まで出会うことができなかった方々とも出会うことができ、様々な価値観に触れることができました。人が行動し、人を動かすとき、その想いは必ず誰かとの出会いによって生まれているものであると思います。
人は学び合い、成長し続けます。人との出会いは、必ず自分を変えてくれます。だからこそ、多くの人の価値観に触れるために、メンバーを増やしていかなければなりません。青年会議所の魅力を私達自身が体感し、心からその魅力を地域の青年世代へ伝え「共鳴」を生み出していくことで、青年会議所の輪を広げていきましょう。そしてそれが、地域の指導力の開発となり、地域へ広く伝播していくことで、次世代の地域を支える大きな運動となるはずです。
青年会議所という組織の魅力を広く青年世代に発信し、次代の地域を担うリーダーたちとの「共鳴」を生み出していきましょう。
共に団結し、この地に迎え入れる準備をしよう
2024年現在、日本では、各地域に671の青年会議所があり、約24,000名のメンバーが活動しております。また、関東地区には155の青年会議所と約6,000名のメンバーがいます。そして、東京では24の地域に青年会議所があり、約1,200名のメンバーが活動をしています。このように青年会議所には、運動を通じて各地域をより良くしていくために課題解決に努める、多くの若きリーダーたちがいます。そして、そのメンバー達は各地域で、それぞれより良いまちづくりを目指し、自ら学び成長してきました。その学びの機会の一つとして、青年会議所には年間を通し、各種大会や諸会議が用意されているのです。
2026年には、その各種大会の一つでもある、関東地区大会の開催を立川で予定しています。関東地区大会とは、主に関東全域の青年会議所メンバーに加えて、市民に対して地域の魅力や学びの機会を発信できる青年会議所の大きな大会の一つであります。本大会に来場される方々に、それらを提供できるように、組織が一丸となって入念な準備を重ね、来場者を迎え入れる体制を整えなければなりません。
これまで立川青年会議所は、60年もの歴史の中で地域と共に多くの事業を開催してきました。その積み重ねが組織の新たな価値となり、地域との繋がりがあるのだと考えます。しかしながら、地域との関係性は、これからも共に運動を行い続けなければ途切れてしまいます。関東地区大会に向けて、もう一度地域と向き合い直し、今一度連携強化を図っていきましょう。
団結こそ最大の準備に繋がります。「段取り八分」という言葉があるように、本年度は大変重要な準備の年となります。
組織が一丸となって入念な準備を行い、地域と改めて結束力を強めることで、組織や地域に仲間との「共鳴」を生み出していきましょう。
多くの人に共に届けよう、そして地域を動かそう
青年会議所では、SNSをはじめとした、チラシやポスター、メディアへのプレスリリースを含めて多くの情報を地域に発信しています。そして、私達の活動も今の地域課題に着目して、その課題に向き合い、市民にも学びになり得る運動を展開しているはずです。しかしながら、青年会議所を知っていてもその魅力を十分に伝えられていない方々もいる、という事実も忘れてはなりません。私達のように、諸団体や企業でも広報に頭を悩ませている方々の声をよく耳にします。
現在は、多くの情報が飛び交っています。それを受け取る相手は、数ある情報の中から取捨選択をして適切な情報を得ることになります。広報は、本当に相手がその情報を知りたいと思っているのかどうか、受け手側が欲している情報を把握できていないケースがあります。そのため、いくら発信をしても響かず、情報の波に埋もれてしまうことになります。しかし、現代では多種多様な情報の発信方法が存在しています。
私達が日頃行っている広報は、決してやり方が間違っている訳ではありません。しかし、市民への発信力やメディアとの連携はさらに高みを目指せる余地があるはずです。自分達の力では情報発信に限界がありますが、地域との協力体制を整え効果的に市民に発信をする工夫も必要です。そして、広報は個人や一つの委員会が行っても発信力は弱く、一人ひとりが積極的に青年会議所の運動を発信することで、その発信力は何倍にも膨れ上がります。また、地域のメディアとのさらなる関係構築によって、我々では届かない幅広い範囲への拡散も可能になります。だからこそ、日々の運動に全メンバーが誇りと想いを持って、地域に伝えていきましょう。その、運動にかける意気込みがメンバーから地域へと伝わり「共鳴」を生み出せれば、それが最大の広報となるでしょう。メンバー全員で一人ひとりが発信を行い、青年会議所の地域での価値観を高めていきましょう。
一つ一つの運動に心を寄せ、組織内だけでなく地域との横断的な連携を取り、地域に魅力的な広報の171 発信をしていきます。一丸となった広報で、地域に「共鳴」を生み出していきましょう。
結びに
「共鳴」~Take a step forward~
「共鳴」とは、他者の考えや行動などに心から感銘を受け周囲を動かしていくことを意味します。
青年会議所の運動は、「社会開発」と「人間開発」です。私達の運動は、相手に心から共感してもらえるように活動をしていかなければ到底できません。そして、自己満足の活動になっていては、地域はおろか組織内の人々の心さえ動かせるはずがありません。他人の考えや行動を変えるというのは、難しいことです。しかし、心から地域を想い、人を想い、行動することができればきっと変えられるはずです。
共に、学び、成長をしていきましょう。
共に、思いやりのある人になりましょう。
共に、人と人が寄り添い合える地域にしていきましょう。
そして、一人ひとりの一歩を、共に大きな一歩に繋げていきましょう。
~個々の「共鳴」が、地域の「共鳴」に繋がる組織を目指して~
「さあ、共に一歩踏み出そう」