理事長 メッセージ

2023年度スローガン INNOVATION ~大きな夢を描き、ともにチャレンジしよう!!~

公益社団法人立川青年会議所2023 年度 理事長所信

はじめに

山本 高義

 「⼈⽣、⼆度なし」

 この⾔葉は、祖⽗の遺訓です。私は時々、この⾔葉を⼼の中で繰り返すようにしています。⼈は例外なく、⼀度きりの⼈⽣、⼆度はありません。当たり前の⾔葉ですが、⾮常に含蓄のある⾔葉だと思っています。

 ⼆度とない⼈⽣だから、刹那的・享楽的な「先楽後憂」で良いのではないかという考え⽅がありますが、⼀回限りの⼈⽣だからこそ豊かで実りあるものにしたいという考え⽅もあります。私は後者の⽣き⽅を選びます。

 豊かで実りある⼈⽣にするにはどうすべきか、そして⾃分を成⻑させるにはどうすべきか。「⼈⽣、⼆度なし」という祖⽗の⾔葉を⼼の中でつぶやきながら、⾃分⾃⾝に問いかけ続けています。

 その⻑い⼈⽣を道に例えれば、⾃ら道をつくり、⼀歩ずつ進んでいかねばなりません。ところが思い通りにいかず、先に進めないこともあります。いや⼀歩も⼆歩も、あるいは数歩も後戻りしてしまうことすら少なくありません。しかし、こうした時、祖⽗の⾔葉には「失敗を恐れるな、たとえ転んでも起き上がれ」とエールの意味も込められていると改めて気づかされます。

 チャレンジには失敗が付き物です。下⼿をすれば⻑い間実を結ばなかったり、チャレンジ⾃体「しなければよかった」という思いが湧き出てきたりすることもあるかと思います。しかし「⼈⽣、⼆度なし」。失敗を恐れて何もしないなど勿体ない。たとえ⽬に⾒える成果が出なくても、果敢に挑戦した経験は必ず⾃分を成⻑させてくれる。そう信じ、常にチャレンジし続けてきました。

 ⻘年会議所には、「チャレンジ」ができる環境があります。多様な業種のメンバーと出会い、学びの機会を得て、⾃分のビジョンが広がっていく。そこに新たな⽬標が⽣まれ、実現のためにチャレンジする。メンバーとともに戮⼒協⼼し、⼤きな⼭を登りきった先には、⾃分もメンバーも、さらには地域も幸せになっている。そんな経験は、私の⼀度しかない⼈⽣をとても豊かなものにしてくれています。

今、時代が求めるACTION

 私たちが⽣きているこの社会は、不確実性の時代(VUCA)と⾔われ、経済やビジネス、個⼈のキャリアに⾄るまで、ありとあらゆるものが複雑さを増し、将来の予測が困難な状態であります。

 急速に技術⾰新が進み、ICTやビッグデータ、⼈⼯知能(AI)、ロボットといった新しい技術が⼤きな変化をもたらしていることも要因の⼀つです。

 加えて、2020年から新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、⾃由な移動・活動が制限されたことで、あらゆるもののIoTが⼀気に進みました。オンラインによるコミュニケーションが当たり前となり、私たちの暮らしや働き⽅、考え⽅さえも⼀変させました。

 このような中、政府はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。DXは単に⽂書や⼿続きを電⼦化するのではなく、IT(情報技術)を徹底的に活⽤することで事業や組織の合理化・利便性を促進し、新たな収益を創出するというパラダイムシフトへと繋がっていくという未来構想です。あらゆる産業においてDXが急速に進んでおり、新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参⼊者が登場したり、ゲームチェンジが起きたりしています。したがって各企業では、競争⼒維持・強化のために、DXをスピーディーに進めています。

 DXが進むと、⼈々の⽣活がより良いものになる反⾯、⼈間の仕事が減ると⾔われています。2040年には今の仕事の8割が減るという予想もある中、絶対的な指針がない時代を⽣き抜くには、私たちはしっかりと時代を捉え、常に向上する気持ちを持ち、個⼈として⽣き抜く⼒を兼ね備え、アクションを起こしていく必要があるはずです。

INNOVATIONを起こし続けよう

 このような外的要因によるパラダイムシフトには、これまでと違ったイノベーションの波が起こっています。イノベーションは和訳すると「技術⾰新」ですが、本来もっている意味は、技術に限定した狭義の単語ではなく、サービスや組織、ビジネスモデルなどの新たな考え⽅や新技術によって、今までにない、まったく新しい価値の創造を⽬指す広い概念です。つまり、社会に⾰新・刷新・変⾰をもたらすインパクトのある⾔葉であり、パラダイムシフトの中核を占め、その原動⼒となっているのです。

 旧態依然としたことでは、到底イノベーションは起こりません。社会でも組織においても様々な意⾒や視点があり、それを推進する組織の意思決定にも多様な視点があって初めてイノベーションが起こるのです。同時に、組織が持続的にイノベーションを推進していくには、多様性、つまり組織のダイバーシティーが重要な条件になります。

 現在はすべてを⾃らの資産で賄うクローズドイノベーション(CLOSED INNOVATION)から、外部資産を活⽤するオープンイノベーション(OPEN INNOVATION)が主流になっています。インターネットやテクノロジーの⾶躍的な発展に連動してグローバル化・産業構造の変化・⼈材の流動化が加速し、どのような組織でも外部資源や他からのノウハウを組み合わせ、活⽤することが無理なくできる環境が背景にあるからです。

 私は、こうした社会的な環境の変化に対応しつつ、歴史や伝統を重んじ、既存のルールを踏まえた上で組織をイノベートするために、⻘年会議所運動(以下「JC運動」という)に携わるすべてのメンバーの個性を尊重し、多様性のある視点で、意思決定する組織づくりを⽬指していきます。

MOTIVATIONを活動のエンジンに

 「笛吹けど踊らず」では組織の活性化は望めません。組織を活性化するには、メンバー⼀⼈ひとりのモチベーション、いわば“やる気”が必要なのです。

 では、組織においてメンバーのモチベーションを持続させ、さらに向上していくために何が必要なのでしょうか。モチベーションには、内側から湧き上がってくる内発型と、外からの刺激や影響による外発型とに分けられますが、私はメンバー⾃⾝の内側から湧き上がってくる意欲や熱意を重要視し、モチベーションを最⼤化した中でのイノベーション+(プラス)の思考で新たな価値を⽣み出したいと考えています。

 JC運動に携わると、時間が取られ、労⼒も要します。アクティブシチズンとしての⾏動に対して、⾃⾝の新たな成⻑の機会と捉えるか、それとも時間を浪費する⾃⼰犠牲と捉えるかで、同じ⾏動でも、その価値は⼤きく違ってくると思います。私は、乗り越えなければならない困難、解決しなければならない課題などと向き合い、全⼒で取り組むことで、⼈間として⼤きく成⻑することができると思っています。また、現代は利便性ばかりを優先させて楽なことを求めようとしますが、時には⼀つのことに徹底的に打ち込むことも必要だと思います。何事も真剣に打ち込めば、悩んだり、苦しんだりすることもあるでしょう。しかし、その過程が⼈間形成の上では⾮常に重要なことだと私は思っています。

 組織としてイノベーションを成功させるために、メンバー⼀⼈ひとりが他者を認め、主体性と⽬的を持ち、意欲と熱意を⼀つの⼤きな炎にして、JC運動のエンジンにしていきます。

組織⼒を最⼤化するMANAGEMENT

 ⻘年会議所という組織は、メンバーの⼀⼈ひとりの個性とそれぞれの使命をもった⻘年経済⼈の集合体です。⾼邁な理想を掲げても⼀⼈では何もできません。多くの⼈が存分に⼒を発揮できるようにしなければ、組織としての成⻑はありえません。

 メンバーが能動的に動き、活躍できる組織づくりを考えていたとき、私は⼀冊の本と出会いました。それはデール・カーネギーというアメリカの著名な成⼈教育者が書いた『⼈を動かす』というマネージメントの本です。カーネギーは⼈を動かす原則には3つあるとしています。⼀つ⽬は、相⼿を認めること。どれだけ相⼿が間違っていようとも批判もせず、苦情も⾔わない。⼆つ⽬は相⼿に、あなたが重要であることを認識させること。そして三つ⽬は、相⼿に強い欲求を起こさせることでした。

 これは私がJC運動を通して学んだ「⾃利利他」の教えに似ていると感じています。「⾃利」とは⾃分が幸せになること、「利他」とは他⼈を幸せにすること、すなわち⾃分が幸せになると同時に他⼈を幸せにするという教えです。ただ⼈を動かすだけでなく、相⼿にも⾃発的にやりがいや喜びを感じてもらいながら、⼀緒に組織を動かすことで組織は最⼤化していくはずです。

地球規模の視点で考え地域から⾏動しよう

 ⽴川⻘年会議所は1965年、⽇本で300番⽬、東京で2番⽬に設⽴されました。公益に資する組織として設⽴以来58年間に渡り、社会課題に向き合い、先⾒の明をもって多様な運動を展開し、歴史と伝統を受け継ぎ、活動エリアを⽴川・国⽴・武蔵村⼭の3市で運動を展開しています。

 2015年国連総会において、SDGs(Sustainable Development Goals)が採択され、私たちみんなが、⼀つしかないこの地球で暮らし続けられる「持続可能な世界」を実現するために、具体的な17のゴール・169のターゲットが⽰されました。

 ⽴川⻘年会議所では、2017年よりSDGsを推進し、2019年には3市とSDGs協働推進宣⾔を締結しました。これに基づいて、⾏政と情報を交換しながら、推進団体の輪を広げ、SDGsを展開していくことが求められています。17項⽬のSDGsの⽬標を推進するだけでなく、2030年までに⽬標を達成するには、具体的な取り組みを企業や⾏政を巻き込みながら、⾏動を起こしていかなければなりません。

 中でも、地球温暖化問題は待ったなしの課題です。これまでも脱炭素社会の実現が叫ばれてきましたが、ヨーロッパ諸国と⽐べて、⽇本は遅れていました。ようやく2020年に菅政権が「2050年を⽬途に温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を⾔明し、初めて政府⽅針が明確に⽰されました。これに呼応するかのように⼤企業は盛んに“脱炭素社会”への取り組みについてコミットメントを出していますが、⽇本の企業総数の99.7%は中⼩企業が占めていることを考えると、⼤企業だけの取り組みでは政府が⽰した⽬標を達成できません。中⼩企業の⻘年経済⼈が集まる⻘年会議所は、この課題に積極的に取り組んでいくべきだと考えています。

 現代社会は、⼀⼈ひとりが地球に影響を与える時代になっています。⼩さな取り組みを、毎⽇続け、意識をまわりに広げていくことで、それは輪となり、世界を変えていく⼒になるはずです。

 私たちの住み暮らすまちの持続可能性について共創し、カーボンニュートラルへの課題の議論を活発化させ、⾏政や地域諸団体と情報を交換しながら、市⺠や地域の企業に浸透させ、当事者意識を持った市⺠を増やし、地域から運動の輪を広げていきましょう。

地域を牽引できる⼈財の育成

 ⽴川⻘年会議所には58年という⻑きに亘る歴史がありますが、近年会員数の減少が課題となっています。⻘年会議所に⼊会して、その理念を学び、運動を起こすことができる「⼈財」を確保していく。これが組織⼒を⾼め、JC運動の最⼤化に繋がると考えています。

 私は、⻘年会議所の活動を通じて、能⼒、⼈脈、経験の3つが得られると思っています。新たな考え⽅や視点、技術などを得て能⼒を⾼め、様々な業種や⼈⽣経験を積んだ同年代のみならず、先進国など世界80カ国以上16万⼈ものメンバーとの国際的なネットワークを通じて⼈脈を広げる。そして普通に仕事をしていては得られない、時には⼈を⼤きく成⻑させるような経験を得ることができます。

 また、⻘年会議所には、地域の⻘年に「成⻑」の機会と、地域の「発展」の機会を提供する役割があります。⻘年会議所は40歳までの⻘年経済⼈の組織で、単年度制で活動しています。毎年リーダーが⽣まれ代わることで組織としての新陳代謝が⾏われ、メンバーは単年度という限られた時間だからこそ、各ポジションの仕事に情熱的且つ精⼒的に取り組み、常に新しい視点で社会と地域を捉え、様々な事業をフレキシブルかつスピーディーに対応することができます。

 地域の社会的な課題を解決し、住みやすい地域社会の創出に取り組んでいる⻘年会議所を広め、より多くの⻘年に⻘年会議所と出会える場を提供することで、⼈財確保を促進したいと考えています。さらには⻘年会議所を通じて、地域をリードできる⼈財へと⽣まれ変わる機会を創出することで、地域の発展へと繋がっていくはずです。

将来に⼤きな夢を描ける教育を

 前述したとおり、2040年には仕事が8割なくなると⾔われている中、今を⽣きる⼦供達への教育のあり⽅も変わってきています。従来通りの詰め込み型の教育だけでは、いずれ来るであろう超競争社会で⽣き残っていくことは困難を極めるでしょう。私は⼦供達に、⾃分で道を切り拓いていく⼒=つまり「⼈間⼒」をしっかりと⾝につけてほしいのです。

 ⼈間⼒を磨く上で重要なのは、⾎の通ったコミュニケーションです。スマートフォンの普及、SNSの浸透、新型コロナウイルスの感染拡⼤により、以前よりも確実に対⾯でのコミュニケーションは減ってしまっています。だからこそ、私は⼈の息づかいであったり、まなざしであったり、⼈としての温もりを⼤切にした、⼈間味溢れるコミュニケーションを⼤切にしたいと考えています。

 私たちの⻘少年育成事業は、⼀つの⽬的に向かって仲間と達成することの喜びや、地域の⼈たちと触れ合うことにより多様性を知り、他⼈への思いやりを学び、地域愛を育んでいます。そこでの学びは⼦供達に⾃信を与え、視野が広がった⼦供達はやがて、将来に⼤きな夢を描くことができるでしょう。未来を担う⼦供達は地域の、⽇本の、世界の財産です。後に豊かな明るい社会を築いていく⼦供達を育てることは、私たちの使命です。

結びに

 「最も多くの⼈間を喜ばせたものが最も⼤きく栄える」
 これは、世に天下泰平をもたらした徳川家康の⾔葉です。

 私がこれまでJC 運動を通して学んだものの中に、「⾃利利他」の教えがあります。この教えはJC三信条「Training=個⼈の修練」、「Service=社会への奉仕」、「Friendship=世界との友情」にも通ずるものであり、⼰と社会を発展させていくために、とても⼤切な精神であると感じています。

 ⽴川⻘年会議所は来年、創⽴60 周年という節⽬を迎えます。さらなる前進と発展を実現するために、私は本年度の運動のテーマを「INNOVATION+(プラス)」としました。単なるイノベーションではなく、イノベーションを中核に据え、「新しいアイデアから新たな価値を創造し、社会に⼤きな変化をもたらそう」という思いを込めています。

 イノベーションはチャレンジの連続です。時には不安や恐れを抱くことや、⾜が竦んでしまうこともあるかもしれません。しかし、⾃利だけを求めるのではなく、利他の精神を兼ね備えつつ起こしたイノベーションの先には、⼀度きりの⼈⽣の充実と、理想の社会の実現が必ず待っているはずです。

 ⻘年会議所の歴史と伝統を⼤切にしつつ、社会の⼤きな潮流を的確に捉え、⽬的意識を持ち、ともに歩んでいきましょう。

 そして私たちにしかない個性や感性、創造性を掛け合わせた若い⼒で、理想の実現に向け、地域に運動を起こしましょう。

公益社団法人立川青年会議所

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