理事長 メッセージ

Katayaburi-2021年度スローガン

公益社団法人立川青年会議所2021 年度 理事長所信

はじめに

 青年会議所の価値、真価とは何でしょうか。

 それは、その名が示すように「会議」を通して多種多様なメンバーと議論を重ね、確かな根拠と利他の精神を備えた想像力を両輪に据え、時代の趨勢にかかわらず、「青年」として情熱と気概をもった行動を通して、常に実践し続けることだと私は考えます。

 一昨年、立川青年会議所(以下、JCI立川)は創立55周年という一つの節目を迎えるとともに、令和という新時代が華々しく幕を開け、2020年は東京オリンピック・パラリンピックという一大イベントが、世界中に多くの感動と興奮をもたらすはずでした。しかし、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、世界中に恐慌をもたらしました。その脅威は人々の生活様式や文化そのものにさえ甚大な被害を与え、まさに混沌を具現化したような恐ろしい病です。21世紀に入って加速したグローバル化により、世界がより深く、幅広く結びついたことで、人やモノの往来が盛んになりましたが、同時に、ある国が何らかの理由で危機に陥れば、世界全体に様々な形で波及していく一例といえるでしょう。

 しかし「生きる」とは、選択の連続であり、不変のうえに成り立つような事象はなに一つありません。朝食に何を食べるかという小さな決断から、人生を左右するような大きな決断まで、生きるということは、それら選択の弛みない集積が指し示す軌道です。特にコロナ禍にあえぐ今日であれば、人々はその瞬間その瞬間に、絶えず選択や決断を強いられていきます。また、すべてが加速度的に変化し続ける現代においては、一つしかない「正解」を求められることより、数多在る中から「答え」を見出すことが求められていくことでしょう。だからこそ、リーダーたらんとする者の学舎である青年会議所の価値は増していくはずです。また、先人達が戦争や天災による荒廃から立ち上がってきたように、この世界的な難局を乗り越えることが私達青年世代の責務であり、同時に青年会議所の真価が問われ、その底力を発揮すべきときが訪れていると考えます。

教育とは保障されるべき機会であり、未来へのパスポートである

 新型コロナウイルス感染症の被害は世界規模かつ重層的なものですが、真っ先にその被害を受けたのは、教育の現場ではないでしょうか。それは感染症対策として実施された全国的な休校に端を発するように、教育の機会そのものが奪われてしまったことからも、深刻さが窺い知れることでしょう。

 また他方、元来進めようとしていたものが半ば強制的に推進されたという一面も挙げられます。その中には、コロナ禍の終息後に、それ以前の日常に戻すべきものと、そうではないものが玉石混淆であり、広義に捉えれば、様々な局面で臨時的な「運用」から「制度」として確立すべきものもあるでしょう。

 特にパソコンやインターネットなどの情報通信技術を活用したICT教育がそれに該当するはずです。まだ設備や環境、費用や人材において課題は山積していますが、2016年に閣議決定された第5期科学技術基本計画における『Society5.0』という概念や、文科省が定める学習指導要領が2020年度に改訂され、特に判断力・表現力などを論理的に展開できる思考を育む目的であるプログラミング教育の必修化もそれを後押ししています。
 現在、ICT教育による授業の質的向上は勿論、所謂21世紀型スキルへの対応として、膨大な知識や情報の中から必要なものを主体的に選び取り、活用できる「情報活用能力」や「創造力」の育成も急がれています。また教師から生徒への一方向的な授業ではなく、双方向型の授業やアクティブラーニングが求められるなか、ICTはそれを助けるツールとしても、時代が求める新しい学びの実現に有効なはずです。

 冒頭に述べたように、様々なコトやモノが世界規模で動き、影響しあうグローバル化と合わせ、AIやIoTが急速に発達する現代社会では、プログラミングによって動くAIなどのロボットが不得手としているクリエイティブな能力や、何事にも主体的にチャレンジできる能力を育てられる学びの機会が必要です。また、そのためには地域に生きるひとりの大人として、また地域に根付く立川青年会議所という組織として、学校や家庭だけでは補えきれない社会教育の機会を地域のパートナーと共創し、それにより地域の発展に繋がるような円環を築いていく必要もあるはずです。そしてどんな困難な状況に於いてもまちぐるみで、地域の宝であり、未来でもある子供達に、誰一人取り残すことなく、健やかな学びを保障していきましょう。

まちづくり~Restructuring by SDGs~

 グローバル社会の到来とともに、多文化共生を前提とした国際交流は、私達市民一人ひとりにとっても身近なものとなっています。しかし、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、地域社会や私達の日常は勿論、その性質上、インバウンド、外国人労働者や留学生などのヒトや機会の流動さえも停滞させてしまいました。また地球規模で取り組んでいる、2030年までの達成すべき持続可能な開発目標(SDGs)にも、甚大な影響を及ぼしています。

 新型コロナウイルス感染症とSDGsは無関係ではありません。SDGsは、いわば人類の目標の集合体です。感染症対策は、既にSDGsのターゲットに含まれており、持続可能な経済成長・生産消費形態の確保や雇用維持等もそうです。コロナ禍はまさに人類が協働によって取り組むことの重要性を浮き彫りにし、またSDGsを達成するための挑戦であると同時に、大きな機会でもあります。

 グテーレス国連事務総長は2020年3月に『共有の責任とグローバルな連帯―COVID-19の社会経済的影響への対応』と題した報告書を発表し、国際社会が新たなパンデミックとどう向き合い、克服していくかの指針が示され、国際社会がSDGs実現に向けて協働しなければパンデミックに対して脆弱になることが指摘されており、今後更なる各国政府および産業界、市民社会からの協力が求められています。

 SDGsの目標として掲げられている課題の多くは、一国だけは解決が難しいものです。例えば気候変動の原因の一つである二酸化炭素に国境はなく、国境を越えた目には見えない自然現象という点では、ウイルスと同様です。それらは確かに地球規模の課題ですが、その一方で、各々が地道に取り組まなければならない地域の課題でもあり、感染症への対策も同様です。課題を解決するための最小単位である「個人」が手洗い等に取り組まなければ、感染拡大は阻止できないことを私達は経験しました。だからこそ、人類の目標からより小さな単位の目標を見つめ直すことが必要です。

 今回私達が学んだように、高度に発展したグローバル化の課題には、全ての人類が助け合うことで最低限の人間らしさを保障できる仕組みを考えていく必要があり、それがSDGsの考え方の基本です。そして、その発信点は自分達が住み暮らす「地域」です。だからこそ、この世界を構成する一つの単位である「地域」から、あらゆる事象をボトムアップ的に再構築していく手段としてSDGsを更に推し進めていきます。

青年会議所とはあらゆる機会を提供する学舎である

 日本青年会議所(以下、JCI日本)が6万人余りの会員数を有していた時代から、少子高齢化が進み、また様々な要因により世の中が変化していくなかで、青年会議所の適正年齢と重なる生産年齢人口も少しずつ減りはじめ、ついには3万人前後を推移する会員数となっています。

 しかし、会員のリクルーティングを止めることはできません。なぜなら青年会議所では40歳を機に会員は卒業するため、新たに会員が加わらなければ組織は消滅してしまいます。そして組織が消滅すれば、青年会議所が掲げる理想を実現すること、目標を達成することは叶わないからです。同時に会員数の拡大は組織を維持するためのものではなく、あくまで「明るい豊かな社会を築く」という壮大な目的を達成するための手段であることも忘れてはなりません。

 「JCI MISSION」は以下のように謳っています。
(JCI:Junior Chamber Internationalの略称、国際青年会議所の意)

To provide development opportunities that empower young people to create positive change.
(より良い変化をもたらす力を青年に与えるために能動的な活動ができる機会を提供すること)

 つまり他者の意識を変えるための能動的な機会を提供するのがJCの使命であり、リクルーティングは意識変革の機会なのです。なぜならリクルーティングというのは、青年会議所という組織や運動論を語り、相手に理解してもらうことで、私達の同志、賛同者、支援者になってもらう活動だからです。またこれはJC運動を発信することとリクルーティングは、双方向に機能するものであるということの証でもあります。
 JC運動を発信し、その魅力を伝えることで入会、賛同してもらうことは、事業によって市民の意識を変え、社会に影響を与えることと同義語であり、だからこそ会員拡大はJC運動の根幹をなすものなのです。

 全国的に青年会議所の会員減少が叫ばれる中、56年の歴史を持つJCI立川もまた例外ではありません。時代の変化は勿論、日々進化を遂げるデジタル革新等により、世の中には様々な選択肢が溢れ、青年会議所の存在は「JCしかない」と言われた時代から、今では「JCもある時代」と言われるようになりました。
 しかし、青年会議所の魅力そのものが無くなってしまったのかといえば、そうではないはずです。
様々な職種や経験を持つ会員が集まった多様性、地域の発展という共通の目的を持ち、利害関係を超えた友情、繋がりを築き、40歳までの限られた時間の中で、青年世代特有の若さと積極果敢に仕掛けていく姿勢は些かも変わらないものであります。
 人生100年時代において、リカレント教育、生涯を通じて学びを得るという観点から見れば、所属する青年会議所での社会貢献等の事業を実践することによる学び(アクティブラーニング)の機会は勿論、国内外の青年会議所が開催する数多のセミナーやシンポジウムなど、気付きと学びを得る機会は無数にあります。また2018年、JCI日本の定款に「ビジネスの機会」が明記されました。ここでいう「ビジネスの機会」というのは、会に所属することで仕事を得るという意味ではありません。青年会議所で得られる「ビジネスの機会」とは、時代を先駆ける新たな情報や、歴史やネットワークに基づく人脈、青年会議所という、ある種バーチャルな組織を通して学ぶことができる実践的な組織マネジメント等が挙げられます。

青年会議所は漫然と組織に所属するだけでは何も与えてくれず、何も望めません。それはスポーツに例えるならば、強豪チームに所属すれば、自ずと選手の実力が上がるだろうという受動的で安直なものです。
 しかし確たる目的を持ち、感性のアンテナを立て、能動的に機会を掴みに行くのであれば、限られた貴重な青年期における学舎として、これほど自己成長の機会が無数に望める環境はそう多くはないはずです。そして地域の青年経済人である私達の成長こそが、この地域社会の発展に繋がることに疑いはなく、またそれは自ずと家庭や会社にも良い影響が波及し、ひいては明るい豊かな社会の実現に繋がっていくことでしょう。だからこそ、青年会議所の一員であることに誇りと責任を持ち、謙虚さと向上心を携え、JC運動の発信を通じたリクルーティングを展開していきます。

「持続可能」の根底にあるもの~進化論×KATAYABURI~

 2013年12月、イギリスの科学誌『ネイチャー・ニューロサイエンス』に議論を呼ぶ論文が掲載されました。それは、「親の記憶・経験は次世代に遺伝する」というものです。
 今までの生物学は、イギリスの科学者であるダーウィンの進化論を出発点とした「学習や経験など後天的に身につけたものは遺伝しない」という説が一般的でした。今回の論文はそんな生物学の定説を覆すものであり、大きな話題を呼びました。これはフランスの博物学者ラマルクによる『獲得形質の遺伝説』、つまり努力や経験値がDNAに書き込まれるというものに近似しています。

 現代ではダーウィンの説が進化論の定説になっており、先述した論文も確たる証拠が揃っておらず、研究の過程にある、いわば憶測の域を出るものではありません。
 しかし、ラマルクが唱えた進化論と同様に、人が持つ感情や記憶、積み重ねてきた努力や今の世代では叶えられなかった願いが、次の世代へ受け継がれるかもしれない。そんな希望の願いが含まれた説としてみれば、なんともロマンのある話であり、遥か古から連綿と受け継がれてきた「生命」に意味があるのならば、自然と腑に落ちるものであります。

 昨今、よく耳にする『持続可能』というキーワードをもとに社会や組織、仕事や生き方を考えるとき、議論されるものは自ずと仕組みや手法に偏ります。それは社会的な課題を解決する手段としてのアプローチであるため、もっともなことです。
 しかし、どんなに素晴らしい仕組みも、日々劇的な進化を遂げるテクノロジーがあろうとも、人が介在する限り、その根底には普遍的な理念、情熱、希望がなければ、すべてはただの形骸に過ぎません。
 青年会議所に当てはめて考えるならば、JCの用語である「LOM(Local Organization Member)」という呼称が示すように、地域に根ざし、地域に必要とされるという大前提のもと、本当の意味で持続可能な組織として存続していくための鍵はここにあるのではないでしょうか。

 また高名な歌舞伎俳優である十八代目中村勘三郎氏について、以下のような逸話があります。
 それは「型がある人間が型を破ると『型破り』、型がない人間が型を破ったら『形無し』」という偶然耳にしたラジオの放送により、若かりし頃の勘三郎氏は徹底的に型を習得したというものです。そして先代から受け継いだ十八番演目である「春興鏡獅子」の演技に生涯をかけ心血を注ぐとともに、後継者であるわが子や弟子に対しても徹底的に基本を叩き込み、その土台をもとに、『型破り』な歌舞伎に精力的に取り組んだからこそ、歌舞伎界やお客様からも認めてもらえたと述懐しています。

 上述の逸話は、日本の武道や茶道などの修行における過程を示した「守破離」に通ずるものがあり、辞書に記載されている意味や、「非常識」や「奇抜」といった一般的なイメージとは一線を画すものです。
 コロナ禍において様々なシーンで声高にパラダイムシフトが叫ばれているからこそ、変革はあくまで「手段」であり、「目的」ではないことを肝に銘じ、物事の本質からぶれないための軸として型を納め、そこから昇華させていく【KATAYABURI】な思考、言動が必要なはずです。
 特に青年会議所においては、地域の課題を発掘し、自らの手で解決策を探し、愚直なまでにトライ&エラーを繰り返していくという型、言い換えれば地域とともに先輩諸兄姉が紡いできた歴史、築いてきた財産があるはずです。まずはこの型を納めたうえで【KATAYABURI】に、新たな地平を切り開いていきます。

結びに

 青年会議所の存在意義とは何でしょうか。

 それは「ひとづくり」であり、「まちづくり」です。時代の奔流にさらされ、否応なく変化を求められる中、普遍的な理念が根底にあることを私達は忘れてはなりません。なぜなら「やり方」という枝葉がどんな実を結び、どんな大輪を咲かすかは、「あり方」という根幹が非常に大切だからです。外的な要因により否応なく変化がもたらされている今だからこそ、改めて青年会議所の存在意義を見つめ直すことで組織が一丸となり、地域における立川青年会議所の価値が高まり、地域を力強く牽引する存在になれるはずだと確信しています。

公益社団法人立川青年会議所

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